手の中の滴を
ぼくだけに返して
あるいは
ひとつふたつ忘れた状態で
ゆうべ きみと居た時は
こんな気持ちになるなんて 思ってもいなかった

へんな帽子を被って
伏し目がちに思いを募らせれば
きみはまた ぼくを好きだったことを
思い出すだろう

もう何もいらないと思うくらい 苦しい
こんなにも近い距離で
ぼくときみしかいない
白い月も見えない

きみがやってくるというので
真新しいシーツにとりかえて
ぼくは希望どおり
窓辺で昼寝をしたよ

隙をついて出て行った猫は
血を出して帰ってきたよ
赤い点点が家のそこいら中についた
ちゃんと見えたよ おまえの赤が
なかなかに布団を干せない天気がつづき
でも 薄い布団で充分な季節にもなってきている

耳をすませて 言葉のひとつひとつを拾っていく
その声のひとつひとつ その時を前にして

さりげなく 旅に行くのを見送ってくれたきみと
また すぐに 会えるような気がする

笑ったカオは きっとぼくを裏切らない
大きく息を吸い込んで バカみたいに吐き出してやる